2009年11月25日 07:38
マリンピア松島水族館(宮城県松島町)の仙台港背後地(仙台市宮城野区など)への移転計画が、大詰めを迎えている。焦点は支援を表明している仙台市の対応。「経済効果は大きい」としながらも、背後地内に整備する公園の貸与や、10億円規模の出資には現時点で慎重な姿勢を崩していない。水族館側が2011年度の移転開業を見据える中、市は事業や資金計画の精査を重ねている。
水族館がまとめた事業計画では、移転候補地は仙台市が整備する高砂中央公園(14.5ヘクタール)の一部約3万5800平方メートル。市から敷地を借り受け、鉄筋コンクリート2階、延べ床面積約1万300平方メートルの建物を建設。大水槽やイルカプールなどの整備を想定する。
総事業費は80億円台半ばとみられ、金融機関からの融資と公的機関や企業からの出資で、ほぼ半分ずつを賄うという。
融資は都銀や地元金融機関の協調融資で30億円超を確保するめどが立った。出資は水族館を運営する仙台急行(仙台市)の11億円、仙台市の10億円、国土交通省の外郭団体「民間都市開発推進機構」(東京)の9億円を軸に調整。ほかにも民間企業から合計で10億円以上を組み入れる。
仙台急行の西条直彦社長は「融資と民間企業からの出資はおおむね目標に達しつつある」と見通しを明かす。移転実現の焦点は、公園使用の許可と出資をめぐる仙台市の判断に絞られた形だ。
松島水族館が老朽化による移転構想を発表したのは昨年6月。仙台市に対して7月、仙台港背後地への移転に協力を要請した。梅原克彦前市長も後押しする考えを伝えていたが、ことし7月の市長選で奥山恵美子市長にトップが交代した。
市は現在、水族館側に質問状を出すなどし、事業の仕組みを精査している。奥山市長は16日の定例記者会見で「公園利用地を貸すことなど支援を決断するには、議会や市民にきちんとした説明をするための作業が必要」と説明する。
市は、水族館誘致による経済効果を、開業年度に63億~79億円と試算。「港周辺の集客力が高まる。10億円の出資も固定資産税や公園使用料で将来的に回収可能」とメリットを説明する。
一方で、市内部には「資金計画の確実性など事業の中身を見極めなければならない」と公金の支出に慎重な声も根強い。
水族館側は11年夏のオープンを目標にしており、既に立地を見据えた県警との交通協議は終えた。年度内に着工し、11年春以降に松島からスタッフや動物などを移す―との青写真を描いている。
市が関与する移転計画は、一部慎重意見がある市議会の議決も、事業化へのハードルとなる。公園区域内への設置をめぐって市建築審査会の同意も必要だ。
西条社長は「仙台の経済界から広く支援を受ける仕組みが整いつつある。県内唯一の水族館を存続させるため、移転への理解を得られるよう努めたい」と話している。